#3 最大重量(1RM)の半分ほどの重量ならば、同じフォームでも活動部位を意図的に変えられる
スポーツやトレーニングのパフォーマンスを上げるためにどうすべきか、今よりも高いレベルに行くにはどうすべきか。本シリーズではスポーツやトレーニングにおいて、理解を深めパフォーマンスの向上に貢献するであろう海外研究をかみ砕いて紹介していく。
狙った筋肉を使う感覚を得にくい
トレーニングにおいて筋肉を意識して行うことは基本である。しかしベンチプレスをしても胸に刺激が入りにくい場合や、懸垂をしているが背中を使っている感覚が掴みにくい場合など、対象とする筋群を意識して動員することが難しい場合にはどのような負荷設定で改善を試みることが適切だろうか。
筋肉を意識的に動員するには負荷により限界がある
異なる負荷のベンチプレスにおいて姿勢を変えずに一部の筋を選択的に動員できるかを調べた研究を紹介しよう。※1バーベルを押し上げる動作であるベンチプレスは胸の筋肉である大胸筋が主働筋となり、肘を伸ばす作用のある上腕三頭筋が協働筋となる。
50%1RM(最大重量の半分)の負荷に設定したベンチプレスにおいて、胸を意識する指示に対して大胸筋の活動が増加し、上腕三頭筋を意識する指示に対して上腕三頭筋の活動を増加させることができた。
しかし、負荷が80%1RMの時には指示に対してどちらの筋も意図的に変化を起こせなかったという結果になった。
即ち、同じフォームでも50%1RMの負荷では意図的に筋の動員を変えることができたが、80%1RMの負荷ではそれができなくなったということだ。
まとめ
本研究ではベンチプレスにて測定を行っているが、それにより得られた負荷設定の目安は他の種目へ応用できる可能性があり、始めて間もない種目においてフォームや感覚を掴むような場合にも有効だと思われる。筋肉を意識してトレーニングを行うことは重要だが、まずは全力の半分程度、もしくはそれ以下の負荷でフォームや感覚を習得していくことが効率的でありパフォーマンスアップへの近道となるだろう。
※1:Effect of verbal instruction on muscle activity during the bench press exercise
Benjamin J Snyder 1, Wesley R Fry
PMID: 22076100 DOI: 10.1519/JSC.0b013e31823f8d11