プランクは腹筋の
再教育を目的としたリハビリである

ブランク
プランク基本姿勢
大変気軽に取り組めるプランクですが、そもそも何を目的として行っているのかを認識することは非常に重要です。

アスリートがプランクやそれらの類似種目に取り組む様子がメディアで取り上げられることで種目が神格化し、万能であるかのように紹介されることもありますが決してそうではありません。
プランクにはどうのような効果がありどのような場合に行うべきか、本来の目的や意義をここで今一度確認していきましょう。

プランクは本来、腹筋の再教育を目的としたリハビリの種目です。
上半身と下半身をつなぐ胴体部分を固めて効率的に動作を行うためには腹筋群の的確な収縮が不可欠です。
何らかの事情で腹筋に力が入りにくく、胴部を固める能力が低下している場合などに適用され、基本的には「マイナスから0に戻すための種目」であり「0からプラスにもっていくことを目的とした種目ではない」ことを認識しておく必要があります。

体幹部の安定や固定を目的として行われることも多いプランクですが、実際の競技動作において強固に体幹部を固めなければいけない局面はごく稀です。
ほとんどの動作においては体幹部の回旋や側屈や屈曲などを伴い、その中で適切な強度とタイミングで腹筋群を収縮させる能力の方が求められます。
そのため、プランクは腹筋群に特定の刺激を入れることはできますが、健常なアスリートにおける競技能力や競技動作に対して直接的に貢献するかは賛否が分かれ疑問が残ります。

また、腹筋群を収縮させて腹部の圧力を高めることを「腹圧」と呼びます。
この腹圧はプランクではさほど高まらず、直立状態とほぼ同等の値であり、バーベルスクワットやデッドリフト、バーベルローイングなどの種目の方が数倍高くなるという研究報告もあります。

そのため「0からプラス方向にもっていくことを目的とした種目」を探すのであれば、より全身を動員して体幹部への負荷も高くなるバーベルスクワットやデッドリフト、バーベルローイング等が推奨されます。

つま先と肘をついて体を浮かすだけの簡単なフォームは取り組みやすく、短時間でもなかなかつらい種目です。「やった感」も得られます。しかし、むやみにつらければ良いというものでもありません。「適切に目的に向かう努力」をしたときのみ、それに即した結果が得られます。

プランクのやり方と注意点

プランク基本姿勢
うつ伏せで体を浮かせるフォームのプランクは、基本的には身体の前面側や腹筋に負荷がかかります。※先述の通り、腹筋は収縮しますが腹圧はあまり高くはありません。
最もつらくなる腹筋群のみに意識がいってしまいがちですが、プランクは特性上、腹筋群だけでなくお尻の筋肉である大殿筋にも自然に力が入る事が理想であり、そのためには腰が反らないことが重要です。

プランク腰が反がっている
少し難しい話になりますが、腹筋群と大殿筋は骨盤を介して協働します。
具体的には、腰が反れば腹筋群と大殿筋は弛緩し、腰を丸めれば腹筋群と大殿筋は収縮しやすくなります。
そのためプランクでは腹筋群の収縮と同時に大殿筋も収縮させた方が骨盤の適切な角度を保つことができます。

プランク腰が高すぎ
腰が高すぎる場合も、通常のプランクに比べて負荷が弱くなり、それに加えて先述した「腹筋群と大殿筋の同時収縮」も起こしにくくなってしまいます。
しかし運動経験が浅い場合や筋力的に胴体部を地面と平行まで下げることが難しい場合、通常のプランクを習得する過程で導入する場合というように、特定の目的に沿うのであれば良いと考えることもできます。

難しい話が続きましたが、プランクでは腹筋群に加えて大殿筋の収縮も同時に起き、それらの結果として腰が反らないフォームになるという点が非常に重要です。

プランクの応用

プランクは両手両足の4点支持が一般的ですが、左右非対称の形にすることで負荷を増やす事ができます。
プランク片手上
片方の手を前方に上げた三点支持の状態でのプランク。
片側の支えがなくなることで、四点支持の時よりも高い負荷がかかります。
画像では片手を上げていますが、片足のみを上げて三点支持を行うバリエーションもあります。

プランク片手片足上
片方の手と、その逆側の足を上げた二点支持の状態でのプランク。
三点支持よりもさらに高い負荷となり、腹筋群だけでなく足や股関節周りの筋群も高い負荷がかかります。

この他にも横向きでのプランクや仰向けでのプランクなどバリエーションは多くありますが、一定以上の高度なバランスが要求される種目や難しい体勢になるほど腹筋群以外の筋の動員も増え、種目本来の目的からは逸脱していく可能性があります。あくまで状況や方向性に合わせ、目的によって取捨選択することが重要です。

まとめ

上述の通りプランクは万能ではなく、伸縮を伴う筋収縮が起きないことからボディメイクや身体つくりとしては不向きな種目です。しかしながら長期や短期の実施により、競技パフォーマンスを向上させる結果につながった報告は多くあります。

そのため、ひとまずやってみて変化を追うことで継続するか否かを判断するのも良いかと思います。重複しますが、「ただ闇雲に時間をかけてつらい事をやる」だけでは効率的とは言えません。何を目的にしてトレーニングを行うのか、自身の方向性と種目の特性を理解した上で進めていくことをお勧めします。


関口 貴久
コラム記事著者
関口 貴久
トレーナー、柔道整復師。
競技パフォーマンス向上のためのトレーニングや傷害予防、またそれらに関する記事の執筆を専門とする。
整形外科、医系学校教員助手、スポーツ系専門学校講師等を経験。日本国際テコンドー協会にて埼玉近郊の大会医療を担当。