背中のトレーニングを床で効果的に行うための
ポイントとバリエーション

バックエクステンション

背中の代表的なトレーニングとして懸垂が挙げられますが、ぶら下がることができる器具や環境が必要になります。そこで本稿では器具を使わず床のみで背中のトレーニングを安全かつ効果的に行うためのポイントとバリエーションを紹介致します。

対角バックエクステンション

対角バックエクステンション
右手と左足、もしくは左手と右足のように対角線となる手足を同時に持ち上げることで背面の筋群を広範囲で鍛えていく種目です。負荷を抜かないようにするため、手足を降ろす時は地面に手足を着けず、できるだけ浮いた状態を保ちながら丁寧に動作を行うことがポイントです。

手首や足首など体の先端部を持ち上げる意識ではなく、背骨を高く反らし、お尻の筋肉である大殿筋を使って大腿部の前面を浮かすイメージで持ち上げ、より強い収縮がかかるように、持ち上げていない側の手足は強く地面を押すようにします。

また、対角線には深い意味があります。人間は歩行や走行、投球など捻ることで力を発揮する動作において、対角線となる背中と殿筋群を同時に収縮させやすいという性質があります。

例えば歩行の際、右側の背筋群が収縮するのと同時に、左の殿筋群が収縮します。これにより上半身と下半身の連動が起きスムーズで効率的な動作が可能になります。多くのスポーツや競技動作において、その特性が強調される事が多々見受けられます。

そのため健康つくりや姿勢の改善、ボディメイクに留まらず、人間の機能的な動きや運動効率を高めることにも繋がります。体力的に手と足を同時に持ち上げることが難しい場合には片手だけ、もしくは片足だけ持ち上げるやり方から始めることもおススメです。

両手両足バックエクステンション

両手両足バックエクステンション
両手両足を持ち上げながら背中を反らすことで腰背部の筋群を鍛える種目です。
左右の背筋と殿筋を同時に使うため、先述の対角での種目よりも高い負荷がかかります。しかしながら動きの特性として特に腰部に負荷が集中するため、筋肉への刺激を変化させる意味合いも含め、可能であれば対角での種目と両手両足での種目のどちらも実施できると理想的です。

両手両足のバックエクステンションに関しても、末端部よりも中枢部の動きを意識することが重要です。手足を上げるというよりは背筋が収縮した結果として背骨が反り、大殿筋が収縮した結果として大腿部が持ち上がるというようなイメージです。

同じようなフォームになっていたとしても、どこの筋肉を意識して収縮するかにより結果は大きく変わってきます。動きにだけ気をとられず、腰背部を鍛えるという目的に合致しているか常に確認しながらトレーニングを進めていきましょう。

平泳ぎ

平泳ぎ
水泳の平泳ぎに似た動きを床で行うことで背面の筋群を鍛える種目です。
先述の2種目が肩回りの動きが少なかったことに対し、水をかくように大きな動作を入れることで背筋群に加えて肩周りも動員する点が特徴です。

また、肩甲骨を寄せるタイミングで背骨を反らすことで背筋群により強い収縮をかけることができます。平泳ぎに関しても、効率的に負荷をかけるために手足が常に床から浮いた状態で行うことをおススメします。

負荷が高すぎると感じる場合には、腹部の下に座布団やクッションを挟むことで地面から体の距離が高くなり手足を浮かせやすくなります。

まとめ

器具を使わず床のみで行うことができる背中のトレーニングをご紹介しました。
座った状態でスマホを眺める時間やデスクワークが多いことで体の前面の筋肉が固まり、背面の筋肉は伸ばされ続けることで前後面のバランスが崩れて姿勢が悪くなってしまいます。背面の筋肉は抗重力筋とも呼ばれ、適切な姿勢の保持にも深く関わる部位ですので、スマホを長く見てしまう方やデスクワークが多い方はぜひ定期的に取り組んで頂くことをおススメします。

また、実際の背中は背骨を反る他にも、船のオールを漕ぐように前から引いたり、懸垂やぶら下がりのように上から引いたり、バーベルローイングのように立った状態で下から引く動きなど多くの方向の動きに関与します。

そのため、今回ご紹介した種目も手軽に負荷をかけることができ非常に有用ですが、機会を見つけてぜひ積極的に他の背中の種目にも取り組んで頂ければと思います。


関口 貴久
コラム記事著者
関口 貴久
トレーナー、柔道整復師。
競技パフォーマンス向上のためのトレーニングや傷害予防、またそれらに関する記事の執筆を専門とする。
整形外科、医系学校教員助手、スポーツ系専門学校講師等を経験。日本国際テコンドー協会にて埼玉近郊の大会医療を担当。