赤ビーツに豊富な硝酸塩と血圧の関係
ビーツってご存知ですか?英名では、beetroot(ビートルート)と言われています。最近、スーパーフードとして、各種メディアを賑わせていますが、なぜそんなに注目されているのでしょうか。理由について少し触れてみましょう。
ビーツが日本に伝えられたのは、江戸時代と言われており、当時は火焔菜(カエンサイ)と呼ばれていたようです。可食部である根を切ってみると、真っ赤ですので、昔の人はそう名付けたのかもしれません。ビーツにも品種があり、一般的に断面が赤いもの(デトロイドなど)を我々は赤ビーツと呼称しています。他にも紅白の切り株の模様(ゴルゴ)や、黃色(ゴールデンビート)など様々です。医療栄養学科では、学生サークル「DHA」が畑に赤ビーツの種を植えて、収穫し、料理に使用しています。
NOが体内で生成されるには
NOが体内で生成されるには、原料となる硝酸塩が必要となります。図に示しておりますので、順を追ってみていきましょう。①ビーツや野菜、果物など、硝酸塩を含んだ食材を食べます。
②咀嚼する際、唾液中に含まれる口腔内細菌が、硝酸塩を亜硝酸塩に変換します。
(食べた食材に含まれる一部の硝酸塩を亜硝酸塩に変換しています)
③亜硝酸塩、硝酸塩を含んだ唾液を飲み込むことで、胃まで移動してきます。
④食道と胃の接合している部分で、高濃度のNOが発生し、拡散します。
(NOは血液中に含まれるタンパク質に結合し、体の隅々まで運ばれていきます)
⑤唾液とともに胃に達した亜硝酸塩は、酸性条件下でアスコルビン酸(ビタミンC)と反応し、NOに変換されます。
⑥亜硝酸に変換されなかった硝酸塩は小腸から吸収され、約25%は、唾液中に再分泌されます。
⑦唾液中に分泌された硝酸塩の30%が、口腔内細菌によって亜硝酸塩に変換されます。
つい最近、この現象の重要性を裏付ける研究結果が報告されました。今年の11月にイギリスとスペインの共同研究チームが発表した内容によると、運動直後にマウスウォッシュで口をすすぎ、口腔内を殺菌すると、運動後の血圧が下がらなかったとのことでした。口腔内細菌を除去してしまった結果、硝酸塩から亜硝酸塩に変換されにくく、結果的にNOに変換されにくい環境となり、血圧低下作用が見られなかったようです。
詳しい研究結果に関しては、こちらからどうぞ
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0891584919307610
参考文献
K E L McColl, Gut. 54(1): 1–3, 2005
Jun Kobayashi et al, Nutrients. 7, 4911-4937, 2015
Katsunori Iijima, Akita J Med. 43: 1-6, 2016
C.Cutler et al, Free Radical Biology and Medicine. 143, 252-259, 2019